山月記
詩人として名を残そうと官を捨てた李徴は、ついに世に認められず、狂って姿を消した。翌年、旧友の袁傪が山道でおそわれかけると、草むらの虎が人の声で「あぶないところだった」と言う。李徴だった。虎になった身で、彼は自分がなぜこうなったかを語る——自分の才を信じきれず、かといって人に頭も下げられなかった「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」が、己を猛獣に変えたのだと。最後に妻子のことより自作の詩の伝録を頼んでしまう己をも、彼は正直に恥じる。漢文の格調を日本語に移した中島敦の代表作。本文は青空文庫の新字新仮名版を収録している。
