
モルグ街の殺人
話は殺人から始まらない。分析とは何かという数ページの考察から始まる——
チェスは分析ではない、ホイストのほうが分析に近い、と語り手は言う。そのあとで
彼はパリで一人の男に出会う。没落した名家のオーギュスト・デュパン。二人は昼を
閉め切った部屋で過ごし、夜になると街を歩く。ある晩、デュパンは語り手が
黙って考えていたことを言い当ててみせる。
新聞が事件を報じる。モルグ街の四階、内側から鍵と閂のかかった部屋で、
母娘が惨殺されている。娘は煙突に押し込まれ、母は庭で首をほとんど切断されている。
窓は釘で留められ、金貨は手つかずで残っている。階段を駆け上がった証人たちは
二つの声を聞いた——一つはフランス語、もう一つは証人ごとに違う言語に聞こえた。
世界で最初の推理小説とされる作品である。密室、素人の名探偵、鈍い語り手、
見当違いをする警察、そして「ありえないものを消していけば、残ったものがどんなに
信じがたくても真実である」という手つき——後の百八十年が使い続けることになる
部品が、ここでひととおり揃っている。
